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アンガーマネジメントの「べき思考」とは?介護現場で感じた怒りとの付き合い方

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介護
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はじめに「普通こうするでしょ」と思ってしまうことがある

仕事や家庭で、「なんでそんなことするの?」「普通はこうするよね」とイライラした経験はありませんか?

私は介護職として働いていますが、正直、仕事中にこう思ってしまうことがあります。

「使ったものくらい元に戻してほしい」
「忙しいんだから、もう少し周りを見て動いてほしい」
「これは言われなくても分かるんじゃない?」

介護の仕事は一人ではできません。職員同士で協力しながら動くため、自分と相手の仕事の進め方が違うと、それだけでモヤモヤすることがあります。

利用者さんとの関わりでも同じです。こちらは「そろそろ食事にしましょう」「お風呂に入りましょう」と予定を考えて動いていても、「嫌だ」と言われることがあります。

忙しいときほど、

「今やってほしいのに……」

という気持ちが出てしまうんですよね。

もちろん、これは介護現場だけの話ではありません。

家族が何度言っても片付けてくれない。待ち合わせの時間になっても友人が来ない。職場で自分ばかり動いているように感じる。

そんなとき、私たちの中には「こうするべき」「こうしてほしい」という自分なりの基準が隠れていることがあります。

アンガーマネジメントでは、怒りをただ我慢するのではなく、「なぜ自分は怒ったのか」を振り返ります。

そのヒントになるのが「べき思考」です。

今回は介護現場で私自身が感じることも交えながら、「べき思考」と怒りの関係について考えてみたいと思います。

「べき思考」は誰にでもある

「約束は守るべき」
「時間は守るべき」
「仕事には責任を持つべき」
「人に迷惑をかけるべきではない」

こうした「べき」は、誰でも持っているものです。

介護現場なら、

「利用者さんには丁寧に接するべき」
「使った物品は元に戻すべき」
「必要なことは申し送るべき」
「忙しいときは職員同士で助け合うべき」

などもあります。

私にもあります。

むしろ、長く仕事をしているほど「こうしたほうがいい」「ここはこうするもの」という自分なりの仕事の基準が増えていくように感じます。

でも、「べき」を持つこと自体が悪いわけではありません。

「利用者さんには丁寧に接したい」という思いがあるから、忙しくても声かけを大切にできます。 「次に使う人が困らないようにしたい」と思うから、使ったものを片付けたり補充したりします。

自分が大切にしていることが、「べき」になっている場合もあるんです。

問題は、自分の「べき」を相手も同じように持っていると思ってしまうことです。

自分の「べき」相手の行動出てきやすい気持ち
時間は守るべき遅れてくる「時間くらい守ってよ」
使ったものは戻すべき出しっぱなし「なんで片付けないの?」
忙しいときは助け合うべき自分の仕事だけしている「私ばかり動いている」
必要なことは申し送るべき情報が抜けている「ちゃんと伝えてよ」
介護職なら周囲を見るべき指示されるまで動かない「少しは気づいてほしい」

こうして表にすると、私自身も「あるなあ」と思うものがあります。

読んでいる方にも、「これ、自分も思ったことがある」というものがあるのではないでしょうか。

なぜ「べき」が怒りにつながるのか

例えば、介護現場で使おうと思った物品が補充されていなかったとします。

忙しいときなら、

「昨日使った人、なんで補充してないの?」

と余計にイライラします。

でも、その怒りを少し分解してみると、

「使った人が補充しておくべき」

という自分の基準があります。

相手の行動が、その基準から外れた。

だから腹が立つ。

一方、「勤務が終わるまでに補充されていればいい」と考える人なら、同じ出来事でも怒りの大きさは違うでしょう。

家庭でも同じです。

「食べた食器はすぐ片付けるべき」という人もいれば、「あとでまとめて片付ければいい」という人もいます。

どちらにとっても、自分の考えは自然なものです。

だから難しいんですよね。

自分では「私はこう考えている」と思っているのではなく、

「普通こうするでしょ」

と思ってしまうからです。

私も「普通は……」と考えてしまうことがあります。

でも、その「普通」は誰の普通なのか。

一度そこを考えてみると、自分の「べき」が見えてくることがあります。

介護現場には「自分だったらこうするのに」がたくさんある

介護の仕事をしていると、「自分だったらこうするのに」と感じる場面が結構あります。

利用者さんへの声かけ一つでも職員によって違いますし、仕事をする順番も違います。

「先にこっちをやったほうがいいのに」
「もう少し利用者さんの話を聞けばいいのに」
「そこまで言わなくてもいいんじゃない?」

人の介護を見ていると、気になるところが出てくることがあります。

私自身、介護現場ではマニュアルだけでは対応できないことも多いと感じています。

なぜなら利用者さんは一人ひとり違うからです。

昨日うまくいった声かけが、今日は通用しないこともあります。

だからこそ、「絶対このやり方が正しい」と自分の「べき」が強くなりすぎると、自分自身が苦しくなります。

介護現場での出来事自分の「べき」一度考えてみたいこと
同僚が物品を補充していない使った人が補充するべき職場の共通ルールになっているか
忙しいのに手伝ってくれない忙しいときは助け合うべき相手の状況も確認できているか
利用者さんが介助を拒否する今、介助を受けるべき本当に今でなければならないか
自分と仕事の順番が違うこの順番で進めるべき安全に問題がなければ別の方法でもいいか
必要な申し送りがない情報共有するべきこれは個人の価値観ではなくルール化すべきことではないか

ここで私は、「自分のやり方と違う」と「間違っている」は別にしたほうがいいと思っています。

ただし、何でも「人それぞれ」で済ませていいわけでもありません。

利用者さんの安全に関わること、尊厳を傷つけるような対応、不適切な介助、必要な情報共有がされていない場合などは別です。

「これは自分のこだわりなのか」
「それとも利用者さんを守るために必要なことなのか」

この線引きは、介護現場で働くうえでも大切です。

利用者さんへの「べき」にも気をつけたい

「べき思考」は、職員同士だけではありません。

利用者さんとの関わりにも出てくることがあります。

例えば、

「食事だから食べるべき」
「お風呂の日だから入浴するべき」
「そろそろトイレに行くべき」
「夜だから寝るべき」

業務として考えれば、予定どおり進めたい気持ちは分かります。

私も、忙しいときほど「今お願いしたい」と思うことがあります。

でも利用者さんにも気持ちがあります。

「今は食べたくない」
「今日はお風呂に入りたくない」
「もう少しここにいたい」

そんな日もあります。

介護職側には介護職側の都合があり、利用者さんには利用者さんの生活があります。

もちろん、健康状態や安全面から必要な対応はあります。

それでも、

「利用者さんのために必要だから今する」のか、「こちらの業務を予定どおり進めたいから今してほしい」のか。

一度考えてみるだけでも、声のかけ方や関わり方が変わることがあります。

「なんで私ばかり!」の裏にある本当の気持ち

忙しい介護現場で、

「なんで私ばっかり動いてるの!」

と思ったことはないでしょうか。

私は、こういう気持ちになること自体は珍しいことではないと思っています。

排泄介助、コール対応、食事介助、記録……。

次々に仕事が重なる中で、周りが動いていないように見えるとイライラすることがあります。

でも、その怒りの奥には、

「手伝ってほしい」
「一人では回らない」
「利用者さんを待たせたくない」
「もう疲れている」

という気持ちが隠れているかもしれません。

表に出ている怒り奥に隠れているかもしれない気持ち
なんで私ばかり!手伝ってほしい、負担が大きい
何回言えば分かるの?ちゃんと話を聞いてほしい
早くしてよ!時間に追われて焦っている
普通それくらいやるでしょ!自分の負担を分かってほしい
どうして拒否するの?このあとの仕事が回らなくて困る

こうして見ると、怒りだけを相手にぶつけるより、

「今、一人では厳しいから手伝ってほしい」

と伝えたほうが、本当に伝えたかったことに近い場合があります。

イライラした日は「アンガーログ」をつけてみる

「自分が何に怒りやすいのか分からない」という人は、簡単に記録してみるのも一つの方法です。

アンガーマネジメントでは、怒りを記録する方法を「アンガーログ」と呼びます。

私なら難しく考えず、こんな感じで十分だと思います。

振り返ること記入例
何があった?同僚が物品を補充していなかった
どう感じた?イライラした
怒りの強さ10段階で6
何を思った?使った人が補充するのが普通でしょ
自分の「べき」使った人が補充するべき
本当はどうしてほしかった?次の人が困らないよう補充してほしかった

記録を続けると、

「私は時間に追われていると怒りやすい」
「自分ばかり仕事をしていると感じたときにイライラする」
「何度も同じことを言う状況が苦手」

など、自分の傾向が見えてくることがあります。

これは自分を責めるためのものではありません。

「私は何を大切にしているから怒ったんだろう」

と知るためのものです。

「許せる・まあ許せる・許せない」で分けてみる

自分の「べき」が見つかったら、全部捨てる必要はありません。

「許せる」「まあ許せる」「許せない」に分けてみると分かりやすくなります。

分類介護現場での例
許せる自分とは仕事の順番が違う
まあ許せる物品をすぐ補充しなくても勤務中に補充されている
許せない利用者さんの安全を無視した介助をする
許せない尊厳を傷つけるような声かけをする
許せない必要な情報を意図的に共有しない

ここで大切なのは、「まあ許せる」の範囲です。

自分ならすぐやる。

でも、相手は少しあとにやる。

結果として必要な仕事が終わっていて、利用者さんにも不利益がない。

それなら、

「自分とは違うけど、まあいいか」

と思えることもあるかもしれません。

逆に、安全や尊厳に関わることまで「まあいいか」にする必要はありません。

何を許容して、何をきちんと伝えるのかを自分で選ぶ。

これもアンガーマネジメントの大切な部分です。

「普通でしょ」ではなく、具体的に伝える

職場でイライラしたとき、

「普通これくらいやるでしょ」
「介護職なんだから分かるでしょ」

と言いたくなることがあります。

でも、相手からすると「普通」が何なのか分からない場合があります。

責める伝え方具体的な伝え方
なんで片付けないの?次に使う人が困るから、使ったら元に戻してほしい
少しは周りを見てよ今こちらが手いっぱいだから、○○をお願いしたい
何回言えば分かるの?○○までやってもらえると助かる
普通これくらいやるでしょ今は○○までを共通のやり方にしたい

私も含めて、怒っているときほど「相手に分かってほしい」という気持ちが強くなります。

でも、本当に分かってほしいなら、

「私は何に困っていて、どうしてほしいのか」

まで伝えたほうがいいんですよね。

怒りを我慢するのではありません。

怒りを、そのままぶつける言葉から相手に伝わる言葉へ変えるということです。

まとめ|介護をしていると「べき」と向き合う場面は多い

介護の仕事をしていると、

「もっとこうしたほうがいいのに」
「普通はこうするでしょ」
「なんで私ばかり」

と思うことがあります。

私にもあります。

人と関わる仕事だからこそ、自分の価値観と相手の価値観がぶつかる場面は避けられません。

そんなとき、

「相手がおかしい」

だけで終わらせず、

「私は何を『べき』だと思っていたんだろう?」

と少しだけ自分の内側を見てみる。

すると、「私は利用者さんを待たせたくなかったんだ」「自分ばかり負担しているようでつらかったんだ」「この介護だけは大切にしたかったんだ」と、自分の本当の気持ちが見えてくることがあります。

もちろん、何でも許す必要はありません。

利用者さんの安全や尊厳を守るために、伝えなければならないことはあります。

でも、

「絶対に守る必要があること」
「できればこうしてほしいこと」
「単に自分とやり方が違うだけのこと」

これを全部同じ「許せない」にしてしまうと、自分が疲れてしまいます。

介護は、自分の思いどおりにならないことがたくさんある仕事です。

利用者さんにもその人なりの思いがあり、職員にもそれぞれの考え方があります。

だから私は、「べき」をなくすより、自分がどんな「べき」を持っているのか知っておくことのほうが大切だと思っています。

「普通こうするべきなのに」

そう思ってイライラしたときこそ、一度立ち止まって、

「これは本当に守らなければならないこと?」
「それとも私の中の普通?」

と考えてみる。

すぐに答えが出なくてもいいと思います。

自分の「べき」と相手の「べき」は違う。

そのことを頭の片隅に置いておくだけでも、怒りをそのままぶつける前に、ほんの少し考える余裕が生まれるかもしれません。

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